無幻真天楼第二部・第五回・四【ゆき Α

  • 2014.01.14 Tuesday
  • 22:10
「寒いッ!!それになんだあの風は!!」
外のゴウゴウという音にも負けない声で茶の間に入ってきたのは
「鳥類…;」
迦楼羅が襖を閉めると服についていた雪がはらりと床に落ちた
「迦楼羅…どうしたんだっちゃ?乾闥婆は…」
緊那羅が迦楼羅の方へ向きを変え聞く
「騒がしいと思ったらやっぱり君だったの」
迦楼羅が襖を閉めてからものの数分と経たないうちに再び襖が開いて矜羯羅が顔を出した
「あれ?珍しいね…乾闥婆がいないなんて」
矜羯羅が襖を閉める
「…ってよ矜羯羅」
今度は矜羯羅が襖を閉めてからものの数秒で再び襖が開いて制多迦が顔を出した
「いっぺんで済ませろいっぺんで!;」
同じことが数回繰り返され京助が怒鳴る
「何怒鳴ってるのー?」
またも襖が開いて今度は悠助を先頭に慧喜、烏倶婆迦、慧光がぞろぞろと茶の間に入ってきた
「ねーねー京助、何怒鳴ってたの?」
「もー…いい…;」
悠助が京助の背中に寄りかかりながら聞くと京助が溜息を吐く
「兄様ずるいッ!!」
「だぁッ!!;」
間髪入れず慧喜が悠助を京助の背中から引っぺがした勢いで京助が前のめりに倒れた
「何をしておるのだ、何を」
部屋の温度で雪が溶け水に変わり迦楼羅の髪から滴り落ちる
「私タオル…」
タオルを撮りに行こうと緊那羅が立ち上がったその時
「全く…さっさと先に行くんですから」
再度襖が開いて今度は乾闥婆が部屋に入ってくるなり迦楼羅の頭をタオルで手荒く拭きだした
「いだだだだだ;もう少し優しくせんかたわけッ!!;」
「だったら自分で拭いてください」
文句を言った迦楼羅の頭から乾闥婆が手を離した
「…けん…だっぱ…」
「なんです?」
烏倶婆迦が乾闥婆の名前を呼ぶ
「乾闥婆…」
京助も続いて読んだ
「だからなんですか」
少し怪訝そうな顔をした乾闥婆
「いや…なんか、まだなれないなーって…な」
京助がぼそっと言うと一同が乾闥婆を見た

乾闥婆は【元】に戻った
【元】の沙紗に

「…そうですか…」
乾闥婆が俯くと迦楼羅がコホンと咳をした
「竜はどこだ?」
唐突に話を切り出す迦楼羅
「父さんならさっき和室にいたけど今は知らん」
「僕たち和室通ってきたけどいなかったよ?ねー慧喜」
悠助が慧喜に聞くと慧喜も頷く
「一体竜に何の話なのさ」
窓枠に背をつけた矜羯羅が聞いた
「沙羅が…」
迦楼羅が口を開いた

無幻真天楼第二部・第五回・四【ゆき ◆

  • 2013.10.10 Thursday
  • 06:52
「あれ?京助…?」
「おう」
廊下で洗濯物の入ったかごを持った緊那羅と京助が出会った
「学校どうしたんだやな」
緊那羅の足元にいたコマが聞く
「この吹雪でオヤスミ」
「オヤスミ…って」
ガタガタと家が吹雪で揺れる
「オヤスミったらオヤスミなんだよ;っと;」
背中に何かがぶつかって前のめりになった京助が自分の絵中を見た
「京助学校とかいうのいかねぇあるか?」
「京助オヤスミあるか?」
「まぁ;」
背中には阿分がくっついていた
「ずっといるあるか?」
「…まぁ」
京助が答えると阿分が尻尾を振りきれるんじゃないかというくらいに振る
「嬉しそうだっちゃね阿分」
「緊那羅もうれしそうなんだやな〜」
コマが突っ込むと緊那羅がぎくっと肩を上げた
「コっ…;」
「ハラヘリなんだやな〜」
コマが京助の横を通って茶の間へと向かう
「……;」
「……;」
ゴウゴウという風の音が薄暗い廊下に響く
洗濯かごを持ったままの緊那羅と背中に阿分をくっつけた京助がただ沈黙していた
「緊那羅洗濯物干さないあるか?」
「えっ!?;あ…そ…そうだっちゃねッ;」
分に突っ込まれて緊那羅が小走りで京助の横を通る
ふわっと香った柔軟剤の匂い
振り向くと緊那羅が和室に入って行くのが見えた
「京助?」
「んあ?」
「どうしたあるか?」
「べつにー」
しばらくそのままだった京助に阿が声をかけるとわざとらしく京助が伸びをして答えた後自室へと向かい足を進める
襖に手をかけようつぃてふと手を止めた京助が自分の手を見た

『ほら少し手、おっきくなってるっちゃ』

緊那羅が言った言葉を思い出す
「おっきく…なってんのか?」
確かに重ねた緊那羅のては自分より少し小さかった
「…そういや…あいつらって…成長すんのか?」
「独り言あるか?」
ぼそっと言った京助に分が聞く
「まぁそう思っとけ;」
襖を開けながら京助が返した


無幻真天楼第二部・第五回・四【ゆき  

  • 2013.09.27 Friday
  • 10:40
「えー…こちら茶の間の窓の前です…何も見えませんドウゾ」
『ハイハーイこちら便所の前の窓の前ー 同じくなんっ…も見えんわ』
京助が茶の間の窓の前で電話の子機を片手に会話するのはおそらく坂田
「この中家から出るっていうのは完全なる自殺行為と思えますが如何思いますか坂田さん」
『あー…そのうち連絡網とか回ってくんじゃね?』
「だよなぁ…;小学校休みなんだから俺らも休みだよなぁ…たぶん」
そういいながら京助が見た窓の外は真っ白で何も見えなく時折強く吹く風がガタガタと窓を揺らした
「連絡網来るなら電話かけてちゃ取れないでしょ」
朝飯の片づけをしながらハルミが京助に言った
『そうですよねッ!!そうですよねハルミさんッ!!じゃ切りますッ』
「はっ!?;ちょ…おいさ…;」
京助が話しかけた電話の向こうからはプープーという音しかせず
「…切りやがった;」
京助が子機を充電器に置いた
「にしてもすごい天気ねぇ…今までこんな天気になったことあったかしら」
ハルミも窓の外を見る
「そうだろうな」
いつの間にいたのか竜之助がストーブに石炭を入れながら言った
「【時】のせいだからな」
「は?」
ガチャンとストーブの蓋を閉めた竜之助
「【時】が近づくとこういうことが起きる」
「こういうって…」

ピルルルル…

京助の言葉の途中で電話が鳴った
「はい…あら、ええ、ちょっとまってね 京助池田君」
「おっ連絡網?」
京助がハルミから子機を受け取る
「もしもし私だ…は?合言葉?知らんがな」
話し始めた京助からハルミが竜之助へと視線を移した
「…ごめんな」
竜之助が小さく言うとハルミが小さく首を振る
「よっしゃー!!休みじゃー!!」
京助の声が家に響いた

「…いくナリ」
「いつでもいいよ」
悠助の部屋で向い合せに座る慧光と烏倶婆迦
その手にあるのは各二枚のトランプ
「早くー早くー」
悠助が言った
「こっち!!」
慧光が勢いよく烏倶婆迦の持つトランプの右側を引いた
「慧光の負け」
慧喜が言うと慧光ががくっと肩を落とす
「えこちゃん弱いー」
「うっ;」
悠助に言われ慧光が涙ぐむ
「泣くなッ」
途端に慧喜に怒鳴られぐいっと涙をぬぐった
「慧光連続で6回負けてる」
トランプを集めながら烏倶婆迦が言う
「し…仕方ないじゃないナリか…;弱いものは弱いナリ;」
慧光が小さく言うとガタガタッと家が大きく揺れた
「すごい風だねー…お家壊れないかな…」
「壊れても悠助は俺が守るから」
不安がる悠助を慧喜が思いきり抱きしめる
「きっと【時】のせいだよ」
烏倶婆迦がシャッシャッと手際よくトランプを切りながら言った
「【時】…?」
きょとんとする悠助がしばらくしてハッとした顔する

思い出した

知らない人が来て

みんなに怪我させて

そして

慧喜がいなくなって

慧喜が泣いて

慧喜が…

悠助が慧喜を見た
瑠璃色の瞳も悠助を見ている
「悠助?」
慧喜が悠助に声をかけた
「えき…」
悠助が慧喜を抱きしめる
「僕も慧喜を守りたい…」
悠助が小さく言った

無幻真天楼第二部・第五回・参【靴下の魔法亜終】

  • 2013.09.06 Friday
  • 06:35
 白く白い真っ白なその空間

真ん中なのか端っこなのかわからないその場所にある薄水色

床なのか天井なのか壁なのかわからない方向にふと顔を向ける

「阿耨達様…?」
柔らかい薄水色が揺れて発せられた声
「あっちゃんでいいってば沙羅」
「ハヒハヒ」
どこからどうしてどうやって入ったのか真っ白な空間に立っていたのは阿耨達
「どうなされたのですか?」
背の高い阿耨達を沙羅が座ったまま見上げると阿耨達がしゃがんだ
「ハヒ!!」
阿耨達の肩の上にいたアサキンがぴょんと飛び降りて沙羅に駆け寄る
「ハヒィー…」
そしてその沙羅の膝を見た
「…大丈夫ですよアサキン様」
そういって沙羅が手を動かす
沙羅の膝の上にいたのはまるで子供の用に体を丸めて寝息を立てる帝羅
「まだ…目は覚ましませんから…」
ゆっくりと沙羅が帝羅の頭を撫でた
「…ハヒ」
沙羅をまねてなのかアサキンも帝羅の頭をちょこちょこと撫でるのを見て沙羅がふふっと笑う
「……」
阿耨達が小さくため息をつくとごそごそと何かを取り出した
「沙羅」
「はい?」
名前を呼ばれて顔を上げた沙羅の前に出されたのは靴下
「ハヒハヒ!!」
アサキンがパタパタと両手をはためかせる
「あの…これは…?」
「靴下とかいう…なんでもクリスマスで魔法がかかってるから持ってるとほしいものがもらえるんだって」
「靴下…」
きょとんとした表情の沙羅がプラプラと目の前で揺れる打靴下をまじまじと見た
「お土産」
「えっ」
沙羅の白く細い手を取った阿耨達が靴下を握らせる
「そしてこっちは…上に」
もう片方の靴下を取り出した阿耨達がアサキンにそれを手渡した
「ハヒハヒー」
受け取ったアサキンが丸くなって眠る帝羅の腹の部分に靴下を置く
「阿耨達様…」
沙羅が少しおろおろしたような顔で阿耨達を見た
阿耨達がその沙羅の顔に返したのは子供っぽい満面の笑顔
「…ありがとう…ございます…」
その笑顔を見た沙羅がつられたのか柔らかい笑顔でお礼を言った



誰もいなくなった茶の間で洗った湯呑を棚に戻していた緊那羅がふとツリーを見た
電球や綿、色々なものが飾り付けられたツリー
サイズが様々な靴下もぶら下がっていた
「…魔法…」
空になったお盆をテーブルに置いた緊那羅がぶら下がっている靴下を手に取る
「ほしい…もの…」
緊那羅が手に取った靴下からハラリと何か紙切れが落ちた
それを拾った緊那羅がプッと小さく吹き出すとまた靴下の中に戻す
「これくらいの魔法なら私にもできるっちゃ」
少し靴下からはみ出していた紙切れには

【ぐらたんがたべたい】

お世辞にも上手とは言えないミミズ文字の横に小さな肉球ハンコが押してあった
「緊ちゃんお風呂あいたわよ」
「あっはい」
ハハハルミに廊下から襖越しに声をかけられて緊那羅が立ち上がる
「私にできること…明日はグラタンっ」
空のお盆を手に取って緊那羅が茶の間から出ていった


無幻真天楼第二部・第五回・参【靴下の魔法】

  • 2013.09.05 Thursday
  • 22:11
 「ハヒィ…」
靴下を手に取ったアサキンがまじまじとそれを見る
「…靴下に興味あんのか?」
京助がボソッと言う
「靴下…そういえば…どうして靴の上に履くのに靴下っていうんだっちゃ?」
「…お前…前にもそんなこと聞いてこなかったか?;」
「きい…たかもだけどあの時は京助答えてくれなかったっちゃ」
「…気のせいだ」
京助がぐびっとお茶を飲みほした
「それ…そうやっておくと欲しいものがもらえるんだってさ」
矜羯羅が言う
「ほしいもの?」
阿耨達がきょとんとして靴下とアサ菌を見た
「ハヒー」
阿耨達に見られたアサキンが靴下をペチペチと叩く
「欲しいんかの」
阿修羅が言うとカッと阿耨達が阿修羅を睨んだ
「ハ…ハハァ〜;」
苦笑いで阿修羅が顔をそらすとクックックとマホが笑う
「ほしいのか?」
「ハヒ!」
京助が聞くとアサキンが頭が取れるんじゃないかというくらいの勢いで頷いた
「へぇ…ほしいものあるのか?」
「ハヒハヒー…ハヒ!!」
マホが聞くとアサキンがもう一つ靴下を掴む
「二つ…ほしいみたいだけど」
「…ね」
ヘラッと笑った制多迦がお茶を飲んだ
「しゃぁねぇなぁ;俺のでいいか?」
京助が立ち上がる
「あ…私のでも」
緊那羅も立ち上がろうとテーブルに手をついた
「アホ;片チンバになるだろが;」
「かたちんば?」
「あー…片方ずつになる…っていえばいいか?だから俺のワンセットやりゃ解決すんだろ」
思い切り方言で言った京助が訂正して茶の間から出ていく
「ハヒ」
トトトっとアサキンが阿耨達に駆け寄ると阿耨達の膝をペチペチ叩いた
「アサキン…そうか…そうだな…」
阿耨達の顔がほころんでアサキンの頭を撫でる
「…よくわかるのー…さすが飼い主っつーかあれやの」
「またにらまれるぞ」
マホに言われて阿修羅がぐっと言葉を飲み込んだ
「白でいいか?一応新品」
京助が白い靴下を手に茶の間へと戻ってくるなりアサキンが京助のもとへかけていく
「ハヒーン」
「…懐いてるっちゃ…」
京助の足にスリスリしているアサキンをみて緊那羅が呟いた
「でもこんなのに本当に欲しいものが入るの?」
矜羯羅がツリーにぶら下がってる靴下を手にして聞く
「あー…まぁ…えー……;クリスマスだから」
聞かれた京助がどもりながら答える
「クリスマスってぇのはなんか魔法がかかるらしいからのー…いつもは普通の靴下でもクリスマスだけは魔法がかかるんかもしれんきに」
「魔法?」
「そうだ!!ナイス阿修羅!!!」
京助が阿修羅を讃えた
「魔法…」
「ハヒィ」
京助から靴下を受け取ったアサキンが再び阿耨達のもとへかけていくとクイクイを阿耨達の服を引っ張る
「…えりたいんじゃない?」
制多迦が言うとアサキンが頷いた
「…そうだな…早くあげたいよな」
阿耨達がボソッと言ってアサキンを撫でる
「またくりゃいいじゃん。なんもしねぇなら別にいつ来てもいいけど」
京助が言った
「そか」
阿耨達が笑って立ち上がる
「またね」
矜羯羅が手を振ると制多迦もヘラッと笑って手を振った
一礼した阿耨達がスゥッと姿をけした

無幻真天楼第二部・第五回・参【靴下の魔法】

  • 2013.08.29 Thursday
  • 05:49
 テーブルの上に並べられた湯呑に傾けられた急須口から湯気の立つお茶が注がれると部屋中に広がる香り
人数が人数なだけに途中でお茶っ葉を取り換える緊那羅
お茶が入れられた湯呑を京助が次々に回すとそれをまた次々に遠くにいる人の方へと回す
いつの間にか当たり前になっていたこういう行為
それを不思議そうに眺めていた阿耨達の前にも湯呑がやってきた
「ハヒーィ…」
アサキンが身を乗り出して湯呑を覗きこむ
「…」
阿耨達が湯呑を見た後ちらっと横目で見た方向には阿修羅とマホ
「…」
その二人からまた湯呑へと視線を移した阿耨達が指でスススッと湯呑を阿修羅たちの方へ動かした
「ハヒハヒ!」
アサキンがテーブルをペチペチ叩くとそれに気づいたマホがニヤッと笑った後キセルで何かを指す
「見てみろ阿修羅」
そして阿修羅に何か耳打ちした
「ん?」
阿修羅が顔を上げると目の前には湯気の立つ湯呑
「ハヒィー…」
アサキンが阿修羅の顔を見上げて小首をかしげた
「…あんがとさん阿耨達」
「フン…」
アサキンを撫でながら阿修羅が言うと阿耨達がそっぽを向く
「熱いからなー」
京助が一応注意を呼びかける
「…熱いって言ったでしょ」
ズズッとお茶を啜る矜羯羅の隣で制多迦が口を押さえていた
「大丈夫だっちゃ?;」
緊那羅が制多迦に声をかけると制多迦がプルプルする手を挙げてそして振った
「大丈夫みたいだぞ?大丈夫そうには見えんけど」
京助が湯呑を手に取って口を付ける
「ハヒー…」
阿耨達の前に置かれた湯呑をアサキンが覗き込んだ
ユラユラ揺れる湯呑の中に映った自分の姿
「ハヒハヒ!!」
そしてペチペチとテーブルと阿耨達を叩く
「早く飲みィ言ってんよ」
「うるさい」
阿修羅が言うと阿耨達が返した
「ハヒ?」
ふとアサキンが何かに気づき小走りで阿耨達から離れる
「アサキン?」
一同がアサキンを目で追った
「ハヒーィー…ハヒ?」
アサキンがクリスマスツリーを見上げる
「ハヒ?」
そしてつるされていた靴下に目を止めた

無幻真天楼第二部・第五回・参【靴下の魔法】

  • 2013.06.08 Saturday
  • 11:08
 「絶対何も…ねぇ」
呟いたマホの吐き出したふわふわと浮かぶタバコの煙の向こうには阿修羅と阿耨達
ひきつる阿修羅とあおの阿修羅をジトォっとした目で見る阿耨達の周りの空気は固まっていた
「…確かに何もしてねぇけど…;」
その様子を見ながら京助が鼻をかむ
「こんな時に限って父さんいねぇし;」
ティッシュを丸めるとゴミ箱めがけて投げる
「阿耨達」
襖があいて顔を出したのは矜羯羅と制多迦
「あ、矜羯羅様制多迦様」
「ハヒハヒ」
阿耨達とアサキンが同時に声を上げた
「なにしにきたのさ」
単刀直入に聞く矜羯羅
「ハヒハヒ」
「…さしぶりアサキン」
その横でアサキンが制多迦によじ登っていた
「あっちゃん何もしないですよー」
笑ながら言う阿耨達から今だといわんばかりに離れた阿修羅がタバコをふかすマホに元へと逃げる
「なんで連れてきたんきに;」
「んー…しょうがないだろ。悠助のあの目で見られたら」
フーッと阿修羅に吐き出した煙をかけながらマホが言う
「オライが阿耨達苦手なんのしっとるだろが;」
小声で、でも勢いよく怒鳴る阿修羅がマホの肩を揺らした
「味方ってわけじゃないんでしょ?」
立ったままで阿耨達を見下ろす矜羯羅が聞くと阿耨達の顔が曇る
「答え方によっては…」
スッと上がった矜羯羅の手の指には小さな宝珠
「待て待て待て;ここ家!!家ん中ですからしてッ!!;」
あわてて京助が止める
「阿修羅は歓迎されてるのにあっちゃんは追い払われる…阿修羅はこんなに可愛いものに囲まれて…ッ」
ブツブツ言った阿耨達がバッと顔をあげてそしてキッと阿修羅を睨んだ
「あっちゃんの方がお前より前にいるのにどうしてお前ばっかりッ!!」
「知らんがな;」
阿修羅に向かって怒鳴った阿耨達
「あっちゃんだってあっちゃんって呼ばれたかった…ッ」
「呼んでもりゃぁいいじゃないかい;」
「呼び方被るだろうが!!」
くっと悔しそうに言った阿耨達に阿修羅が突っ込むと怒鳴り返された
「被るって…;」
「世の中 あっちゃん って呼ばれてるやつなんざ沢山いらっしゃると思うんですけども;」
スンスンと鼻をすすりながら京助が言う
「あっちゃんは阿修羅とかぶるのが嫌なんだ」
「はっはっは;困ったねぇ;」
「いくつだよ;」
ドヤ顔で言いきった阿耨達に呆れる京助と阿修羅
「…で?結局何しにきたの?」
無視されていた矜羯羅が少しイラっとしているような口調で聞く
「寂しいから来ただけ」
「ハヒハヒ」
阿耨達が答えるとアサキンも制多迦の頭の上で頷いた
「ふぅん…ならいいよ」
「いいのかよ;」
矜羯羅が手を下す
「大人しくしているなら…ね」
そしてそのまま歩くとテーブルの傍に腰を下ろした
「…かったね阿耨達」
ヘラッと笑った制多迦も矜羯羅の傍に座る
「お茶持ってきたっちゃ」
襖があいてポットを持った緊那羅が入ってきた
「せめぇ;」
それなりに広いはずの栄野家の茶の間
少し前までは京助と悠助と母ハルミ、そしてコマとイヌしかいなかったため無駄に広いと持っていた茶の間が今となっては狭くて仕方なく感じる
「…ったく…」
今となってはこっちが当たり前で日常で
京助がちょっと嬉しそうに立ち上がると茶箪笥から湯呑を人数分テーブルに並べた

無幻真天楼第二部・第五回・参【靴下の魔法】

  • 2013.05.06 Monday
  • 20:28
 「待て京助」
歩き出した京助を止めたのは摩護羅迦の声
「んだよ;」
「行くなら阿耨達は連れて行くな」
いつ吸い始めたのか手にしたキセルから煙を吸い吐き出す摩護羅迦が阿耨達を見上げた
「上の…帝羅の欲しいもの…」
ちらっと摩護羅迦が京助とその後ろにいる緊那羅を見た
同時に慧喜が悠助を抱きしめる
ヒュウと冷たい風が吹き抜けた
「俺はここが好きだ。ここにいる奴らが好きだ」
バサバサと摩護羅迦の頭の布が風に揺れる
「ハヒハヒ!!」
ぶんぶんと両手を振ってアサキンが阿耨達の前に立った
「全力で守るぞ?」
ニッと笑った摩護羅迦の口元からタバコの煙が出た
「わ…」
【私も】と言いながら前に出ようとした緊那羅を京助の腕が止める
「きょ…」
下がらない京助の腕と振り返らない京助
緊那羅が羽織っている京助の上着をぎゅっとつかむ
「ゴ等もっ」
悠助の腕からするっと抜け出たコマとイヌがくるっと宙返りをしてゼンとゴの姿になると摩護羅迦に並んだ
「かっ…わッ」
その姿を見た阿耨達が目をキラキラさせてゼンゴを見下ろす
「ええええー何々!!もふもふワンコがこれまた可愛い格好になるの反則だろー!!えええー!!やだもうー!!」
興奮して一人盛り上がる阿耨達に摩護羅迦以外の全員がぽかんとした
「えへえへ…可愛い…」
しゃがんでゼンゴと同じ視線の高さになった阿耨達がニヤる
「き…気持ち悪いんだやな;」
「こ…こわいんだやな;」
ザワワワっと全身の毛を震わせたゼンゴが摩護羅迦の腰にしがみついた
「怖くない怖くないーおいでおいでー」
エヘラエヘラ笑う阿耨達が手招きする
「いやなんだやなー!!」
「うわあああああんッ!!;」
「こらこら;上るな上るな;」
恐怖のあまり摩護羅迦に上る二人
「摩護羅迦ずるい…いいなぁ…あっちゃんにもしてほしいなぁ…」
「ハヒハヒ…」
しょぼくれた阿耨達の頭をアサキンが背伸びして撫でた
「なんなんだアイツ;本当に…」
ようやく下がった京助の腕
その腕を緊那羅が掴んだ
「どうし…」
腕から手へ手を滑らせた緊那羅が京助の手を握る
「…やっぱり京助…おっきくなってるっちゃ」
「は?;」
京助の手を持ち上げて掌を合わせた緊那羅
「ほら少し手、おっきくなってるっちゃ」
「そう…か?;ってかなんで今…;」
掌を合わせたまま京助が緊那羅に聞く
「京助は少しずつだけどちゃんと大きくなってるんだなって…思ったんだっちゃ」
「まぁ…成長期なんだろ」
「…うん…そう…だっちゃね」
合わせた掌
緊那羅の指が折れて京助の手をつかんだ
「京助の時は…流れてるんだっちゃね」
「へ?;」
「ううん;なんでもないっちゃ;…京助の手あったかいっちゃねっ;」
ぽつり呟いた緊那羅がそのつぶやきをかき消すかのように苦笑いをしながら京助の手を放す
それを見ていた悠助が慧喜の手をつかんだ
「悠助?」
そして掌を合わせる
「まだ慧喜の方がおっきいや…」
合わせた手を見て悠助ががかりする
「早く大きくなりたいなー…慧喜より大きくなって慧喜と結婚するんだー」
「悠助…うんっ!!」
慧喜が嬉しそうに悠助を抱きしめる
「こらこらそことそこ」
両肩にゼンゴを乗せた摩護羅迦が呆れたように京助達を見る
「イチャイチャしてんだやな」
「ラブラブなんだやな」
「緊張感ないんだやな」
「まったくなんだやな」
ゼンゴも摩護羅迦の肩の上でヤレヤレと両手を上げて首を振った
「いつ、誰が誰とイチャイチャしたんだっつーの!!;」
京助が怒鳴るとゼンゴと摩護羅迦がそろって京助と緊那羅を指さした
「してねぇッ!!;」
それに対して京助がまた怒鳴る
「へくしょッ;」
その怒鳴り声とほぼ同時に緊那羅がくしゃみをした
「くしゅッ;」
「くしゅッ;」
続いてゼンゴもくしゃみをする
「へ…っくしょぉッ!;」
更に京助もくしゃみをすると木の枝に積もっていた雪がどささーっと落ちた
「とにかく…早く家はいるべ;」
鼻水を啜る京助が言う
「あっちゃんお兄さんは?」
慧喜に手を引かれ歩き出した悠助が聞いた
「ねぇあっちゃんお兄さんは来ちゃだめなの?寒いのに?」
悠助が阿耨達を見ると京助達も阿耨達を見た
「ねぇ京助…ダメなの?」
「なぜ俺に聞くか;…まぁ…絶対何もしねぇっつーんなら…」
ちらっと緊那羅を見た後に京助が言うと阿耨達がアサキンを抱き上げて
「絶対しないっ!!」
満面に笑みで親指を立てた



無幻真天楼第二部・第五回・参【靴下の魔法】

  • 2013.04.11 Thursday
  • 22:13

「あっちゃん…お兄さん」
悠助が躊躇いがちに阿耨達を見上げた
「あっちゃん…おにい…さん…」
その言葉を噛みしめるように繰り返した阿耨達の周りにだけ春が来たような空気が流れる
「って呼べばいいの?」
「うんッ!うんうんッ!!」
嬉しそうに頬をそめて頷く阿耨達
「…なんか…図体が無駄にでかいから…素直に可愛いって思えない…」
「俺がやったら可愛いって思ってくれるのか?」
「ないな」
ぼそっとつぶやいた京助にマホが聞くと京助がさらっと返した
「なら緊那羅だとどうだ?」
「へっ?;」
いきなり名前を出された緊那羅がびくっとなってまた上着を地面に落とす
「どうして今それを聞くか;」
「んー?なんとなぁく?」
ニヨっと笑ったマホが緊那羅を見て今度はにこっと笑った
「そんなお前らが好きだぞ」
「あー…ハイハイ;」
お約束のセリフを言ったマホに京助が面倒くさそうに返す
「あっちゃんお兄さんは何しに来たの?」
「あっちゃんはねー…」
ヘラヘラしながらしゃがんで悠助と目線を合わせた阿耨達から慧喜が悠助を引き離した
「なにするんだ慧喜」
「ふんっ」
ぶーっと頬を膨らませた阿耨達から不機嫌そうに慧喜がそっぽを向いた
「だから…さ…なんなんか…な;」
「うん…;なんとなく…素直に可愛いって…思えないっちゃ…;」
立ち上がった阿耨達は目測おそらく2メートル近い
「あっちゃんは…寂しいから来た」
「は?;」
きっぱりと言い切った阿耨達にきょとんとする京助達
「だぁって矜羯羅様も制多迦様も慧喜も慧光も烏倶婆迦もみーんなこっちにいるし」
またぶぅっとふてくされたようになる阿耨達
「それに」
「それに?」
付け加えて話そうとした阿耨達にマホが聞く
「こっちには上の欲している物がたくさんあるだろ?」
その言葉を聞いたマホの服が一瞬で変わった
「ハヒハヒ!!」
アサキンが地面に降り立ち阿耨達を守るかのようにマホの前に立つ
「へくしょっ!!」
一瞬緊迫した空気を一瞬でぶち壊したくしゃみの主は悠助
「…とりあえず…家…入るか…;」
京助が言った

無幻真天楼第二部・第五回・参【靴下の魔法】

  • 2013.03.11 Monday
  • 20:49
 「あっちゃんのほうがあっくんより数倍、数百倍可愛いとおもうッ!!」
「やかましいッ!!;近所迷惑だ叫ぶなッ!!でかいのは図体だけにしろッ!!;」
阿耨達が全力で主張して叫ぶと京助もそれをかき消すかのような大声で怒鳴った
「二人ともやかましいっちゃ…」
緊那羅が腕をさすりながらつぶやく
「悠助もそう思うだろ?」
「えっ?」
「悠助は関係ないだろッ!!」
悠助に聞いた阿耨達の前に慧喜が立った
「やっぱり可愛いかどうかは可愛いのに聞かないとって思ってさー」
阿耨達が悠助を見る
「確かに悠助は可愛いけどッ…」
慧喜もちらっと悠助を見た
わけがわからずきょとんとしたままゼンゴを抱いている悠助を見て慧喜と阿耨達がぐっと唇をかむ
「か…わいい…悠助かわいいー!!」
耐え切れなくなった慧喜が悠助を抱きしめた
「あー!ずるい!!慧喜ずるッ!!あっちゃんも悠助抱きしめた…」
「はいそこまで」
阿耨達がのばした腕をマホが掴む
「何する摩護羅迦!!」
「まぁ落ち着け阿耨達」
にっこり笑うマホ
「とりあえずお前がどうしてここに来たのか…聞こうか」
「へくしゅっ!;」
シリアスなシーンをぶち壊したのは緊那羅のクシャミ
「…お前…」
「え…へへ;」
気まずそうに緊那羅が京助の上着を羽織りなおす
「緊ちゃん大丈夫?」
慧喜に抱きしめられたままの悠助が心配そうに緊那羅を見た
「とにかく…プレゼントをもってきたっつー感じじゃねぇっとことはわかってるんじゃね?だとしたらやっぱりあれか?俺とか悠とかか?」
鼻水を啜った緊那羅をかばうかのように京助が一歩前に出た
「きょ…」
そんな京助の更に前に出ようとした緊那羅を京助が止める
「もしかしたらお前かもしれねぇだろ」
「へ…?」
小さくいった京助にきょとんとする緊那羅
「僕様とかいってたやつは操ちゃんを探してた…お前が操ちゃんだったってことばれてたらお前を狙ってきたのかもしんねぇじゃん」
「そんなことはな…」
「いとも限らんだろ」
ふっと振り返った京助

なんとなく今までとは違うような気がして緊那羅が止まった

今までより少しだけ目線が高くなった気がする

肩幅も少しだけ広くなった気がする

声も何となく低くなったような気がする

さっきまで感じなかったのにどうして今こんなにも違う京助に気づいたのか

「な?」
同意を求められてはっとした緊那羅
「で…でも…私は…私だって京助を…」
言いかけた緊那羅の肩から京助の上着が落ちた
あわてて拾い上げる緊那羅
手にした京助の上着は自分には少し大きいことに気づく
出会った時借りた服はぴったりだったのに

いつの間にか大きくなっていた京助

自分とは違い成長していく京助

確実に進んでいる【時】

緊那羅が京助の上着をぎゅっと抱きしめた

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